【AI投資の正解】「上がる株教えて」は愚問。「多段階抽出(マルチステージ・スクリーニング)」で市場の歪みを暴く技術

AI惣菜だ。

多くの個人投資家が、生成AIの使い方を根本から間違えている。 ChatGPT、Gemini、Claude、Perplexity……どのAIを使っていようが関係ない。「今、買うべき株を教えて」「今後10倍になる株は?」と、魔法の杖のように問いかけていないか?

断言するが、そのプロンプトで返ってくるのは「誰でも知っている退屈な大型株」か、AIが文脈を捏造した「ハルシネーション(幻覚)」だけだ。あなたがその情報を元にトレードして負けるのは、AIの性能のせいではない。あなたの**「質問力(エンジニアリング)」**が未熟だからだ。

私は現在、AIを活用して株式投資を行っているが、1回のプロンプトですべての条件を満たす銘柄を出力させることは絶対にしない。

勝率を劇的に高めるための、唯一の論理的な解。それが「多段階抽出(Multi-Stage Extraction)」だ。今回はその具体的な手法とフレームワークを公開する。

なお、今回記事内で公開するプロンプトは、あくまでこの手法の論理構造を理解してもらうための「基本モデル(具体例)」に過ぎない。 私が実戦で使用しているプロンプトは、ここからさらに数百回の改良を重ね、独自の変数や除外条件を組み込んだ「秘伝のタレ」であり、さすがにそれは飯のタネなので公開できない。しかし、この「基本モデル」を使うだけでも、あなたの銘柄選定の精度は劇的に向上するはずだ。

なぜ「一発検索」は失敗するのか

LLM(大規模言語モデル)の構造上の弱点を理解する必要がある。 「割安で(PBR1倍割れ)、成長性があり(増収増益)、かつテクニカルが良い(ゴールデンクロス)」という複雑な条件を一度に投げると、AIは各条件への「リソース」が分散してしまう。

結果として、以下のようなエラーが頻発する。

  • PBRの条件は満たしているが、業績は赤字の銘柄を平気で混ぜる。
  • 数年前の古いデータを最新のデータと誤認して回答する。
  • 条件に合う銘柄が見つからないため、無難な「高配当ランキング上位銘柄」を提案してお茶を濁す。

これは、人間に「全力疾走しながら、針に糸を通し、暗算をしろ」と命令するようなものだ。どんなに優秀なAIでも、精度が落ちるのは当たり前だ。

勝てるAI投資の作法「分割と統合」

正解は、タスクを**「完全に独立した複数のリサーチ」に分解し、最後にそれを「統合」**して、重なる部分(交差点)だけを抽出することだ。

私は以下の3ステップで銘柄を炙り出している。これはどの生成AIでも通用するフレームワークだ。

STEP 1:【バリュー調査】資産価値の選別

まず、市場のセンチメント(感情)を無視し、財務データのみに基づいた「事実」をリストアップさせる。ここでは「人気」や「ニュース」はノイズとして排除する。

【入力するプロンプトの基本例 ①】

Web検索機能を使用し、現在、日本株市場において以下の条件を満たす「極めて割安な銘柄」を20社リストアップし、テーブル形式で出力せよ。

検索条件:

  1. PBR(株価純資産倍率): 1.0倍未満(0.5〜0.8倍が望ましい)
  2. 財務健全性: 自己資本比率50%以上、かつネットキャッシュが潤沢であること。
  3. 配当利回り: 3.5%以上

※企業名、証券コード、PBR、配当利回り、直近の時価総額を記載すること。解説は不要。

STEP 2:【モメンタム調査】材料と業績の選別

次に、全く新しいチャット(スレッド)または文脈をリセットした状態で、直近の「好材料」を探させる。STEP 1の結果はここでは考慮させない。

【入力するプロンプトの基本例 ②】

Web検索機能を使用し、直近2週間以内に以下の「ポジティブなニュース」が発表された日本株銘柄を20社リストアップせよ。

検索条件:

  1. サプライズ決算: コンセンサス予想を上回る上方修正を発表した。
  2. 株主還元: 増配、または自社株買いを発表した。
  3. 特殊材料: 大手企業との提携、M&A、アクティビストの保有判明など。

※企業名、証券コード、発表日、ニュースの概要を簡潔に記載すること。

STEP 3:【統合】黄金の交差点を抽出する

ここで初めて、STEP 1(割安放置株)とSTEP 2(材料株)のリストをAIに読み込ませ、突合させる。

【入力するプロンプトの基本例 ③】

以下の「リストA(バリュー株)」と「リストB(好材料株)」を照合し、両方に含まれる銘柄、あるいは「割安かつ好材料が出ている」と判断できる銘柄を抽出せよ。

抽出された銘柄について、以下の観点で最終投資判断のための分析を行え。

  1. 需給状況: 信用倍率は1倍以下か?(空売りの踏み上げ期待はあるか)
  2. チャート: 日足は上昇トレンドの初動にあるか?
  3. リスク: 隠れた悪材料(特損など)はないか?

私が実際にやっていること(Advanced)

上記は誰でも使える基本形だが、私が実際に運用しているプロンプトでは、さらに以下のようなフィルタリングをかけている。

  • セクターローテーションの重み付け: 現在資金が流入している業種を優先的に評価させる指示。
  • 機関投資家の動向: 特定の投資主体の売買動向をニュースから推測させる指示。
  • 「罠」の排除: 見かけ上の低PER(特益によるもの)や、減配リスクの高い高配当株を自動で弾く論理定義。

これらを何度もトライ&エラーし、自分だけの「最強のスクリーニング・プロンプト」を作り上げることこそが、AI時代の投資家の仕事だ。

なぜこの手法だと「勝率」が跳ね上がるのか

このプロセスの本質は、**「AIの思考リソースを一点集中させる」**ことにある。

  1. STEP 1で、AIは「財務分析アナリスト」として完璧に振る舞う。
  2. STEP 2で、AIは「ニュース速報リポーター」として完璧に振る舞う。
  3. STEP 3で、AIは「ファンドマネージャー」として意思決定を行う。

単一のプロンプトで全てをやらせる「横着」を捨て、手間をかけて役割を分担させることで、情報の**「解像度」**が劇的に上がるのだ。

結果として抽出されるのは、**「財務的に下値不安が少なく(バリュー)、かつ直近で株価が上がるトリガーが引かれた(モメンタム)銘柄」**のみとなる。 これが負けにくい理由だ。

最後に:道具を使いこなせない人間に富は来ない

「面倒くさい」と思っただろうか? その「面倒」の先にしか、市場の超過リターン(アルファ)は落ちていない。

AIはあくまで「優秀な助手」であり、最終確認をして発注ボタンを押すのはあなた自身だ。

まずは自分の「検索手法」からアップデートすることだ。

思考を分割せよ。そして、論理で統合せよ。

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