【省エネ基準適合義務化関連銘柄】2025年7月の住宅着工減、法改正がもたらす市場の変化

2025年8月29日

URLをコピーしました！

2025年7月、国土交通省が発表した新設住宅着工戸数は市場予測を下回る結果となり、多くの関係者に衝撃を与えました。この背景には、同年4月に施行された「省エネ基準適合義務化」と「4号特例の縮小」という建築基準法の大改正があります。法改正前の駆け込み需要が大きかった分、その反動が数字として明確に現れた形です。しかし、これは単なる需要の先食いだけを意味するものではありません。むしろ、日本の住宅市場が新たなステージへと移行する大きな転換点であり、投資家にとっては新しいチャンスの始まりとも言えるでしょう。

市場トレンドの分析：省エネ住宅が当たり前の時代へ

今回の法改正により、原則として全ての新築住宅・建築物に対して省エネ基準への適合が義務付けられました。これにより、高断熱・高気密な住宅がスタンダードとなり、ZEH（ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス）の普及がさらに加速することは間違いありません。市場調査会社のレポートによれば、省エネ住宅関連の市場規模は今後5年間で年率平均5%以上の成長が見込まれています。これは、単に法律で定められたからというだけでなく、近年の光熱費高騰を受け、消費者のエネルギーコストに対する意識が格段に高まっていることも大きな要因です。今後は新築だけでなく、既存住宅の断熱リフォーム市場の拡大も期待されます。

需給要素の変化：淘汰とチャンスが交錯する

この大きな変化は、住宅市場の需給バランスにも影響を与えます。

需要サイド：短期的には駆け込み需要の反動減が続くとみられますが、中長期的には「省エネ性能」が住宅選びの重要な指標となり、高い技術力を持つハウスメーカーや工務店に需要が集中する可能性があります。また、住宅ローン金利の動向も、住宅購入のタイミングを左右する重要な要素であり続けるでしょう。
供給サイド：法改正に対応できない中小の工務店は淘汰されるリスクがある一方、高機能な断熱材やサッシ、省エネ設備を供給する建材メーカーには大きなビジネスチャンスが広がります。しかし、依然として続く資材価格の高騰や、建設業界の深刻な人手不足（いわゆる2024年問題）は、供給側の大きな課題として残ります。

【省エネ義務化】関連銘柄リスト

東証プライム

業種	企業名・証券コード	テーマとの関連性	詳細
🏭 化学	積水化学工業 (4204)	高性能な断熱材や住宅部材を手掛け、省エネ住宅の性能向上に不可欠な存在。	株探で見る
🧱 ガラス・土石製品	AGC (5201)	高断熱・遮熱性能を持つ複層ガラス「Low-Eガラス」で国内トップシェア。	株探で見る
🧱 ガラス・土石製品	日本板硝子 (5202)	省エネ性能の高い高機能ガラスを多数展開し、ZEH普及に貢献。	株探で見る
🔩 金属製品	LIXIL (5938)	高断熱サッシやドア、省エネ性能の高い住宅設備機器を総合的に提供。	株探で見る
🔩 金属製品	三協立山 (5932)	アルミ建材大手で、断熱性能に優れたサッシやエクステリア製品に強み。	株探で見る
⚙️ 機械	ダイキン工業 (6367)	省エネ性能の高い空調機器（エアコン）で世界トップクラス。住宅のエネルギー消費削減に直結。	株探で見る
🏗️ 建設業	大和ハウス工業 (1925)	戸建・集合住宅ともにZEH普及を牽引し、省エネ技術の研究開発に積極的。	株探で見る
🏗️ 建設業	積水ハウス (1928)	業界に先駆けてZEHを標準化し、環境配慮型住宅のトップランナー。	株探で見る
🏗️ 建設業	住友林業 (1911)	木造建築に強みを持ち、断熱性能の高い木質部材や設計ノウハウで省エネ住宅に対応。	株探で見る
🏗️ 建設業	大東建託 (1878)	賃貸住宅におけるZEHの普及に力を入れており、法改正が追い風に。	株探で見る
🌲 卸売業	伊藤忠建材 (8095)	住宅向け建材の専門商社。断熱材や省エネ関連商材の需要増が期待される。	株探で見る
🏢 不動産業	飯田グループホールディングス (3291)	主力の分譲戸建住宅で省エネ基準への対応を強化しており、スケールメリットが強み。	株探で見る

東証スタンダード

業種	企業名・証券コード	テーマとの関連性	詳細
🧱 ガラス・土石製品	日本アスコン (5393)	アスファルト製品が主力だが、建築用の防水・断熱材も手掛ける。	株探で見る
🔩 金属製品	文化シヤッター (5930)	断熱性能の高いシャッターやドア製品で、住宅の開口部の省エネ化に貢献。	株探で見る
🏗️ 建設業	ヒノキヤグループ (1413)	ZEHを標準仕様とした企画住宅「Z空調」が好調で、省エネ性能を強みとする。	株探で見る
🏗️ 建設業	タマホーム (1419)	ローコスト住宅でも省エネ基準への対応を進めており、幅広い顧客層に訴求。	株探で見る
🏢 不動産業	ケイアイスター不動産 (3465)	分譲住宅事業が主力。法改正への対応とデザイン性の両立で差別化を図る。	株探で見る

東証グロース

業種	企業名・証券コード	テーマとの関連性	詳細
🈂️ サービス業	アンドパッド (5032)	建設業界向けのDXツールを提供。4号特例縮小による構造計算等の業務効率化ニーズを取り込む。	株探で見る
🈂️ サービス業	note (5243)	建築士や専門家が法改正に関する情報発信を行うプラットフォームとして活用が期待される。	株探で見る

投資へのアドバイス

本記事で紹介した銘柄は、今回の法改正を追い風に中長期的な成長が期待される企業です。しかし、株式市場は常に変動しており、短期的な駆け込み需要の反動や、資材価格の動向、金融政策の変更など、様々なリスク要因が存在します。本記事はあくまで情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において慎重に行ってください。

まとめ

2025年4月の法改正は、住宅業界に短期的な痛みを伴う一方で、日本の住宅性能を世界標準へと引き上げる大きな一歩です。この変革期において、高い技術力で省エネ基準に対応し、消費者のニーズを的確に捉えることができる企業が、今後の市場をリードしていくことになるでしょう。投資家としては、短期的な着工戸数の減少に一喜一憂するのではなく、どの企業がこの大きな波を乗りこなし、持続的な成長を遂げるかを見極めることが重要です。