AI惣菜だ。
AIでゲーム開発が速くなる。だから開発支援会社が儲かる。
その間に、契約書が一枚抜けている。
十人月の仕事が五人月で終わる。同じ金額を請求できるなら利益は増える。五人月分しか請求できないなら、売上が半分になることもある。
これは仮定の計算だ。だが、効率化の取り分を考えるには、AIの性能比較より先に必要な問いだ。
工数を減らしたのは誰か。浮いた金を取るのは誰か。
道具を貸す会社、成果物を納める会社、人を出す会社。同じ開発支援でも答えは違う。
「AI導入」の四文字を外して、11社の請求書を見に行く。
1. まず、何が起きている?
CRIはゲーム向けミドルウェアのSwitch 2対応、シリコンスタジオはSDK・制作ツールへの開発協力を公表した。C&Rはゲーム部門の新拠点を開設。アピリッツは受託に加え既存ゲームの運営移管も手掛ける。これらは制作工程との具体的接点であり、AI導入による利益増そのものを確認した資料ではない。
以下の各社欄に、確認できた製品・実績と一次資料を示す。販売、出荷、無料ダウンロード、シリーズ累計は異なる指標であり、集計時点もそろっていない。横並びの売れ行きランキングとしては扱わない。
2. 見出しだけ読んでは見えない本質
AI惣菜の構造分析。
開発費の削減は、誰かの支出の削減だ。その支出が外注費なら、支援会社にとっては売上の減少にもなる。効率化が起きたという事実だけで、受注側の増益まで決めてはいけない。
固定価格で成果物を納める契約なら、品質を保って工数を減らせば採算が改善する。人月で請求するなら、時間短縮に単価や稼働の組み替えが追いつくかが問題だ。道具の利用料なら、採用の増加が契約単価と更新収入へどう届くかを見る。
「開発支援」を一括りにするほど、この差が消える。必要なのはAIを使っている会社の名簿ではなく、削った費用を自社の利益として残せる契約の地図だ。
3. 金はどこへ流れる?
パブリッシャーの開発予算
企画・試作・量産工程へ配分
音声・映像・描画の共通機能
ミドルウェア・制作ツールを採用
人材・受託・共同開発
不足工程と運営を外部へ依頼
検証・翻訳・運営移管
品質維持と発売後の更新
4. 関連銘柄を掘り尽くす
誰から、何の代金を受け取るかで分類した。市場区分も添えるが、並び順は推奨順位ではない。複数の顔を持つ会社は、このテーマで追う利益の入口へ置いた。各社の事実と、その事実から導く分析を分けて読んでほしい。
⛏️ ツルハシ
CRI・ミドルウェア
ゲームの主役には映らない、音と映像の道具。
確認事実:CRI・ミドルウェアは音声・映像等の共通機能「CRIWARE」を供給。2025年4月3日にゲーム向け全製品のSwitch 2対応を公表した。 [1]
AI惣菜の分析:開発会社が共通機能を内製する代わりにCRIWAREを使えば、利用料等が供給側へ落ちる。対応端末や採用作品の増加が契約売上へ届くかが焦点。新機種対応の発表だけで販売本数連動の収益と決めつけない。 弱点:採用タイトル数は販売本数でも契約単価でもない。採用増が売上増になる料金体系と、更新・保守費用を確認する。 テーマ接続度:直接恩恵/上場情報
シリコンスタジオ
作品ではなく、作品を作る環境へ入り込む。
確認事実:シリコンスタジオは2025年6月5日、Switch 2のSDK、モデル・エフェクト編集ツール、NintendoWare Bezel Engineの開発協力を公表した。 Windows等に対応するポストエフェクト製品YEBISも供給する。 [2] [3]
AI惣菜の分析:SDKや編集ツールの開発経験は、顧客が次の制作環境を整備する際の接点になる。ゲームが売れる前にも開発対価が発生し得るが、保守・追加対応まで受注できるかで持続性が変わる。利益の源をライセンスと受託に分ける。 弱点:技術採用とゲーム販売の取り分は別だ。新機種発売だけで保守契約や追加受注が増えると決めつけない。 テーマ接続度:直接恩恵/上場情報
🔗 受託・周辺受益
ポールトゥウィンホールディングス
不具合が増えても、追加料金を取れなければ忙しいだけだ。
確認事実:ポールトゥウィンHDは品質検証、ローカライズ、音声制作、運営サポートを展開し、海外ではSideの拠点網を持つ。 [4] [5]
AI惣菜の分析:デバッグ、ローカライズ、音声、運営支援を工程横断で受ける。言語や端末の増加は作業を増やすが、固定契約なら利益を圧迫し得る。AIで工数を減らした成果が顧客の値下げになるか、自社の粗利になるかが分岐点だ。 弱点:ヒット作に関与しても販売本数連動の報酬とは限らない。稼働率、賃金、契約単価、追加作業の請求可否で利益が変わる。 テーマ接続度:周辺恩恵/上場情報
トーセ
ヒットを当てる前に、顧客の開発計画を完遂する。
確認事実:トーセは顧客のゲーム開発・運営を受託し、IRで開発収入とロイヤリティ収入を説明している。 [6]
AI惣菜の分析:外注したい工程が増え、受注と人員稼働が結びつけば開発収入になる。ロイヤリティの有無は案件ごとに確認する。顧客の開発費が膨らむことを、そのまま受託側の利益増と読むのは逆になる場合がある。 弱点:顧客の計画変更・開発中止、固定価格契約の工数超過が弱点。関与作品は公表されない場合があり、ヒット作名を推測しない。 テーマ接続度:周辺恩恵/上場情報
エクストリーム
足りない人を埋める商売と、成果物を納める商売。
確認事実:人材・開発支援とIPビジネスを持ち、メサイヤゲームスの『ラングリッサー』等を扱う。常駐支援と受託開発を組み合わせる。 [7]
AI惣菜の分析:常駐支援は稼働人数と単価、受託は納品価格と工数が収益を左右する。二つを組み合わせることで顧客の工程へ入り込めるが、採用すれば自動的に売上が立つわけではない。待機率と案件の切れ目が効く。 弱点:人月型の売上とIPライセンスの売上は利益構造が違う。技術者の待機、採用費、契約更新を切り分ける。 テーマ接続度:周辺恩恵/上場情報
アピリッツ
新作を作るだけでなく、既存ゲームを引き継いで回す。
確認事実:オンラインゲームの自社開発・受託開発・運営移管を手掛ける。『ゴエティアクロス』など自社運営の経験も持つ。 [8] [9]
AI惣菜の分析:運営移管は顧客が手放すタイトルを維持する受け皿になる。運営を標準化し、残る課金・契約対価が費用を上回れば利益になる。成長市場の受益というより、成熟ゲームの原価構造を組み直す能力を見る。 弱点:運営移管は成長作を引き継ぐとは限らない。縮小する売上を低い原価で維持できなければ、人員だけ抱える。 テーマ接続度:周辺恩恵/上場情報
クリーク・アンド・リバー社
クリエイターの人数より、稼働するチームを売る。
確認事実:ゲームの人材支援・制作を手掛ける。2026年5月にゲーム部門の新拠点「C&R Creative Studios 御成門」の営業開始を発表した。 [10] [11]
AI惣菜の分析:企画・制作・人材をまとめて供給できれば、開発会社は不足工程を外に出せる。新拠点は受注を増やせる容量であって確定売上ではない。受注が増床費を吸収し、外注・人件費控除後の粗利が増えるかを追う。 弱点:増床は利益そのものではない。人員の稼働が埋まる前には家賃・採用・教育の固定費が増える。 テーマ接続度:周辺恩恵/上場情報
アカツキ
運営型ゲームは、発売後も開発が終わらない。
確認事実:アカツキゲームスは『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』『ロマンシング サガ リ・ユニバース』等の開発・運営を担う。後者は2026年も運営イベントを継続している。 [12]
AI惣菜の分析:継続イベントとコンテンツ追加を担う機能が、共同事業の収益へつながる。毎回新作を当てるモデルとは違うが、既存タイトルの減衰から逃れられるわけではない。更新費用と契約上の取り分をセットで見る。 弱点:原作や配信を単独所有しているわけではない。協業先との分配、運営費、特定作品への依存を確認する。 テーマ接続度:周辺恩恵/上場情報
KLab
有名IPを動くサービスへ仕上げる共同開発。
確認事実:2026年4月21日、『ドラゴンクエストスマッシュグロウ』をスクウェア・エニックスと共同開発し正式サービス開始と発表。海外企業との共同開発・配信モデルも説明する。 [13] [14]
AI惣菜の分析:ドラクエ等との接点は単なる連想ではなく、開発参加という事実がある。ただし受託型・共同事業型でリスクは違う。固定報酬なのか運営成果の分配なのかを確認し、ヒットの総売上を自社へ配賦しない。 弱点:有名IPの看板は自社の利益率を保証しない。契約上の取り分、開発資金、課金継続の三つが必要だ。 テーマ接続度:周辺恩恵/上場情報
Aiming
IPの顔を借り、運営する中身を作る。
確認事実:オンラインゲームの企画・開発・運営を行い、制作実績に『陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン』などを掲載する。 [15]
AI惣菜の分析:オンラインゲームの開発・運営はIP保有者が支払う対価、または共同事業の収益へ接続する。制作実績の蓄積は次の案件の入口になるが、作品の成功と制作側の契約採算は一致しない。大型案件への依存を測る。 弱点:開発に関与したこととIP所有は別。共同事業の分配や特定作品への依存、工数超過を見ないと受益を過大評価する。 テーマ接続度:周辺恩恵/上場情報
gumi
共通エンジンを使い、IPごとの作り直しを減らす。
確認事実:自社ゲームエンジンと他社IPを組み合わせた開発・受託に取り組み、『ジョジョの奇妙な冒険 オラオラオーバードライブ』を2025年9月25日に配信開始した。 [16] [17]
AI惣菜の分析:複数作品へ開発資産を再利用できれば工数を抑え、受託や共同開発の粗利を改善する余地がある。ただしエンジンを持つという説明だけでは効率化の実績にならない。開発費と受注採算の変化で検証する。 弱点:IPゲーム、製作委員会出資、暗号資産等は別の収益・リスク。連結損益の変動をゲームの好不調だけで説明しない。 テーマ接続度:周辺恩恵/上場情報
5. まだ市場が見ていない場所
ここでいう「見ていない」は、見出しだけでは拾いにくい利益経路のことだ。株価に未織り込みと確認した、という意味ではない。
派手な新作がなくても、制作現場の費用は動く。CRIの共通機能、シリコンスタジオの描画・開発環境は、開発会社が一から作らずに済む工程へ入る。採用の数だけで満足せず、利用料と保守費を引いた取り分まで見る。
もう一つは運営移管だ。アピリッツのように既存タイトルを引き継ぐ仕事は、新作の大ヒットと違う時間軸で金が動く。縮小するゲームでも、残る収入に合わせて費用を組み直せるなら仕事になる。売上を伸ばす能力だけでなく、売上が落ちる局面で原価を制御する能力が問われる。
6. 逆に、名前だけの関連株を切る
「生成AIを使う」は、顧客からAI利用料を取るという意味ではない。任天堂、ソニーG、カプコン等の大手は開発投資の需要側として検討したが、このマップでは外部顧客へ制作機能を提供する企業と混ぜない。非上場のエンジン会社を日本株の銘柄として掲載したり、採用実績から販売連動ロイヤリティを推測したりもしない。
デジタルハーツHD(3676)はMBO公表・監理銘柄のため通常のテーマ候補から除外した。これは「既に上場廃止済み」と同じ意味ではない。MCJ(6670)は2026年6月16日、IMAGICA GROUP(6879)は2025年9月29日の上場廃止を確認し除外。事業との接点があっても、現在買える日本の上場株という条件を満たさない会社はマップへ入れない。 [18] [19] [20] [21]
7. 次に見る数字
- 決算で受注残・稼働率・案件単価・売上総利益率を照合。人員増と受注増のタイミングがずれていないか確認する。
- 新機種対応の発表後に、採用契約・売上計上・保守更新を追う。採用タイトルの数だけでは料金は分からない。
- AI活用の効果は実際の開発期間、修正工数、再作業、契約単価で検証する。削減率の目標を達成実績と呼ばない。
8. このシナリオが死ぬ条件
- 開発中止・延期で人員の待機が増え、受注残が稼働へつながらないなら、需要拡大を前提とした採用と増床は固定費の重荷に変わる。
- 仕様追加や不具合修正を追加請求できず、売上増と同時に粗利率が低下するなら、「忙しいから儲かる」という仮説は死ぬ。
- AIで減らした工数と同じだけ請求単価が下がり、品質確認や再作業の費用も残るなら、効率化の利益は支援会社へ落ちていない。
利益へ届く経路が確認できても、現在の株価が割安とは限らない。本稿では株価評価・需給・短期資金流入を未判定とし、テーマの強さから売買タイミングを導かない。
9. AI惣菜の視点
開発会社が「外注費を減らした」と喜び、外注先が「AIで増益する」と語る。同じ一円を、双方の利益に数えていないか。
効率化の話を聞いたら、次に請求単価と粗利率を開く。単価が下がり、空いた人員が次の仕事へ移れなければ、技術は進歩しても会社は儲からない。AIの性能より、節約を誰が持ち帰るかだ。
調査範囲・確認事項
最終確認:2026年9月26日|掲載11社|親テーマ:ゲーム
調査基準日:2026年9月26日。掲載企業の現行商号・証券コード・市場区分をJPXまたは公式IRで照合し、JPXの監理・整理・上場廃止一覧とも照合した。個社JPX画面を取得できなかったコナミ・ネクソン・サイバーエージェントは公式IRで補完。公開直前に適時開示と指定状況を再確認する。分類は事業の接続構造であり、推奨順位や割安度ではない。
テーマ別・作品別の利益寄与額、非開示の契約料率、将来受注、株価の割高割安は未判定。公開直前の全社適時開示・上場状態再確認が必要。資料公表日不明は確認日と明示。2026-09-26更新。
主要根拠・一次資料
- [1]CRI:Switch 2対応・任天堂機向け800タイトル以上の採用実績 — 資料日付欄:2025-04-03/確認日:2026-09-26
- [2]シリコンスタジオ:Switch 2 SDK・ツール開発協力 — 資料日付欄:2025-06-05/確認日:2026-09-26
- [3]シリコンスタジオ:Windows等対応YEBISの機能(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [4]ポールトゥウィンホールディングス:事業資料(資料日付はページ参照/日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [5]ポールトゥウィンHD:グループ会社一覧(資料日付不明/確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [6]トーセ:公式FAQ・開発範囲と売上3本柱(資料日付不明/確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [7]エクストリーム:事業・公表資料(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [8]アピリッツ:事業・公表資料(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [9]アピリッツ:オンラインゲーム受託開発(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [10]クリーク・アンド・リバー社:事業・公表資料(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [11]C&R:ゲーム事業(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [12]アカツキ:事業・公表資料 — 資料日付欄:2026-07-31/確認日:2026-09-26
- [13]KLab:事業・公表資料 — 資料日付欄:2026-04-21/確認日:2026-09-26
- [14]KLab:海外共同開発・配信モデル — 資料日付欄:2026-08-07/確認日:2026-09-26
- [15]Aiming:事業・公表資料(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [16]gumi:事業・公表資料 — 資料日付欄:2025-09-25/確認日:2026-09-26
- [17]gumi:事業概要(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [18]JPX:現在の監理・整理銘柄(2026-09-26照合)(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [19]JPX:上場廃止銘柄一覧(2026-09-26照合)(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [20]JPX:2025年上場廃止銘柄(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
- [21]デジタルハーツHD:MBOを説明する経営者メッセージ(公表日不明・日付欄は確認日) — 資料日付欄:2026-09-26/確認日:2026-09-26
